肝臓内科
肝臓内科
肝臓内科では肝機能障害、脂肪肝、慢性肝炎、肝腫瘍などの診断・治療を専門に行っています。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれています。その理由は、肝臓の病気はある程度進行しないと症状が現れないことが多いからです。そのため、肝臓に異常が起こっても気づきにくく、肝臓の病気が見つかったときにはすでに病状が進んでいることも少なくありません。ですから、健康診断などで定期的に肝臓が正常に機能しているかどうかを確認することはとても重要です。健康診断の結果、肝機能の異常を指摘され、要治療・要精密検査の指示のあった方は、症状がなくても速やかに医療機関を受診してください。経過観察の指示があった方につきましても、指示されている期間内に受診することをおすすめします。
肝臓病の初期には症状がないことがめずらしくありません。早期発見、早期治療のために肝臓病のリスクがないかをチェックして、当てはまる方は受診をおすすめします。肝臓に関するお悩みなど、気軽にご相談ください。
肝臓は様々な酵素の働きによって代謝や解毒などの機能を果たしていますが、肝臓が障害を受けると、血液の成分が変化したり、酵素が血液中に漏れ出したりします。そこで、血液の成分を検査して、肝臓が正常に機能しているかを調べます。
肝細胞内に多く含まれる酵素で、肝臓や胆汁(肝臓が作る消化液)が流れる胆道に障害が起こると血液中の数値が高くなります。
肝細胞をはじめ腎臓や心筋(心臓の筋肉)の細胞内に多く含まれている酵素で、肝細胞や心筋の細胞内で障害が起こると、血液の中に流れ出し、数値が高くなります。
肝臓、腎臓、すい臓、小腸などに含まれている酵素で、アルコール摂取量が多いときや脂肪分の摂取が多いときに数値が高くなります。
肝臓や胆道、骨、小腸、腎臓などに含まれる酵素で、肝臓障害や胆道の病気で胆汁が排泄されなくなると血液中にあふれ出てきて数値が高くなります。
肝臓で作られるたんぱく質で、血清中の蛋白の半分以上を占めています。肝臓の機能が低下すると数値が下がってきます。
古くなった赤血球が壊れてできる色素で、胆汁色素とも呼ばれ、胆汁の主成分となっています。肝臓障害や胆道の病気で胆汁が排泄されなくなると血液中にあふれ出て数値が上がります。
肝炎ウイルスに感染しているかを調べる検査には、「HBs抗原」と「HCV抗体」があります。
腹部超音波検査では脂肪肝の有無などがわかります。
肝炎とは肝臓の炎症のことで、肝炎ウイルスの感染、アルコールの過剰摂取、肥満など、様々な原因で起こります。急性肝炎と慢性肝炎に分けられており、急性肝炎は6か月以内に落ち着くものをいい、6か月以上の期間持続する肝炎を慢性肝炎といいます。慢性肝炎で軽い肝炎が長期に続く場合、症状はあまり認めません。しかし10年、20年あるいはそれ以上続き、肝臓に線維(コラーゲンなど)が蓄積し、肝細胞が再生する力を失うと肝機能が低下してきます。こうして肝硬変に進行します。
慢性肝炎では皮膚のかゆみを伴うことがあります。炎症が強い場合には倦怠感を認めることがあります。急性肝炎で短期間に炎症が起こる場合は、発熱、のどの痛み、頭痛、体のだるさなど、かぜのような症状を認めることがあります。食欲低下、吐き気、腹痛を感じることもあります。また、血液中のビリルビン濃度の上昇により、黄疸が出現し、皮膚や白目の部分が黄色くなったり、尿が濃い茶色になったりすることがあります。皮膚に発疹がみられることもあります。
劇症肝炎(急性肝不全)は、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れます。全身の臓器に障害を起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になります。
B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することによって起こります。血液感染(輸血や出産、刺青、針刺し事故など)や性交渉などによることもあります。出産後や乳児期に感染すると高率に慢性化し、肝硬変、肝がんへと進展する場合があります。症状としては全身のだるさ、食欲の低下、吐き気、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。
B型慢性肝炎では徐々に肝臓が破壊されていくため自覚症状が現れないことが多いといえます。成人で感染した場合はB型急性肝炎となり、一部は劇症化(重症の肝炎になり、肝不全により死に至る)することがありますが、多くは治癒します。B型肝炎に対してはインターフェロン治療や核酸アナログ製剤が有効であり、病態に応じて使用されています。
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によるもので、血液を介して感染します。感染しても肝炎は重症化せずに、急性肝炎としての自覚症状がない場合もあります。劇症化することはまれですが、感染後に約70%は慢性肝炎に移行するとされています。C型慢性肝炎では、肝臓で炎症が持続することにより、肝硬変に進行したり、肝がんができやすくなったりします。肝硬変や肝がんに進展する最も大きな要因といわれています。
C型肝炎では、かつては副作用の強いインターフェロン治療が積極的に行われていましたが、近年では副作用の少ない経口薬(直接作動型抗ウイルス薬)が登場し、ほとんどの患者様でウイルスを排除できるようになっています。
アルコール性肝障害は常習的に飲酒している方に発症する病気です。飲酒によりアルコール性脂肪肝になり、さらにアルコール性肝炎に進展します。治療せず放置し大量飲酒を続けると、肝炎が長く続くことによって肝硬変や肝がんに進行する場合もあります。治療は原因が飲酒であることから、禁酒が原則となります。禁酒により約30%の方の肝臓は正常化し、約10%は悪化して、肝硬変へ進行するといわれています。
中性脂肪が肝臓に多く蓄積した状態となるのが脂肪肝です。過食や運動不足、飲酒などが原因としてよく知られています。健康診断などで指摘されることも多い病気ですが、脂肪肝だけで症状が現れることはほとんどありません。
飲酒しない人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びますが、この中に肝炎が持続し、徐々に線維化が進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という病態があることが分かってきました。NASHでは、肝炎を改善しない限り、肝硬変や肝がんに進行していくとされています。肥満や生活習慣病との関連性が強いことから、生活習慣を改善することが有効です。診断には肝生検という肝臓の組織を採取して調べる検査があります。
薬剤性肝障害は、医療機関で処方された薬やドラッグストアで購入できる薬、サプリメントなどが原因となり起こる肝機能障害です。中毒性と特異体質性に分類されています。血液検査の結果で判明することが多く、症状としては体のだるさ、食欲低下、吐き気、嘔吐、黄疸、褐色尿などを認めることがあります。
自己免疫性肝炎は、自らの肝細胞を体内の免疫が破壊してしまう自己免疫疾患です。中年以降の女性に多くみられます。免疫の働きを抑えるステロイドによる治療が有効である場合が多いとされています。
原発性胆汁性胆管炎は、中年の女性に発生することが多い病気です。肝臓の中で胆汁の流れがうっ滞して、それに伴い肝細胞の破壊と線維化が徐々に進行します。かゆみなどの症状が現れます。何らかの免疫の異常が関与していると考えられています。
肝炎が長期間続くと肝細胞の破壊と再生が反復されて肝臓に線維組織が溜まってきます。この状態を肝臓の線維化といい、線維化が進行した状態が肝硬変という病気です。
血液検査ではアルブミンが低下したり、血小板数の減少がみられたりします。肝硬変では様々な症状がみられ、とくに肝臓の働きを十分に保てなくなった非代償性肝硬変では黄疸、肝性脳症、腹水、浮腫などがみられます。また、食道静脈瘤をはじめとする色々な合併症を伴いやすくなります。
肝がんは、肝臓の細胞ががん化する「原発性肝がん」と、他臓器で発生したがんが肝臓に転移する「転移性肝がん」に分類されます。
肝細胞がんは慢性肝炎や肝硬変を背景に発生することがほとんどで、それらの早期の治療や進展抑制が非常に重要になってきます。肝機能低下による症状がみられるため、肝硬変などにみられる合併症(症状)があらわれます。病状に応じて、外科的切除、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法、抗がん剤(分子標的薬)、放射線照射など、様々な治療法が選択されます。